2011年04月25日
とある家族の心の旅立ち(4)
蘭堂「お父さんを許す気になりましたか?」
恒子「正直なところ、その覚悟まではできていないかもしれません。ですが、できることは何でもやってみます。許せるものなら、許して楽になりたいのが本音です。」
蘭堂「では、やってみましょうか。お父さんを許すのは、他ならないあなた自身の自由のためです。」
「紙を用意してください。上の方に『父に感謝すること』と書いてください。どんなことがありますか・・・?」
恒子「そうですね・・・まず、働いて養ってくれたことです。父が働いて稼いでくれたおかげで、私も大きくなりましたから・・・。」
蘭堂「それを紙に書いて下さい。他にありますか?」
恒子「う~ん・・・。私が小学生の頃、よく公園に連れていってくれましたね・・・。」
蘭堂「それも書き込んで下さい。まだありますか?」
恒子「それくらいでしょうか・・・。」
蘭堂「わかりました。では、もう1枚の紙に『父に謝りたいこと』と書いてください。謝りたいことは、何かありますか?」
恒子「取り立てて・・・何も・・・あえて言えば、心の中で反発し続けたことでしょうか・・・。ただ、心から謝りたいという気持ちにはなれませんが・・・。」
蘭堂「実感が伴わなくてもいいんです。まず形から入りますから。とりあえず今のことを書き込んでください。」
恒子「書きましたが、形といいますと、何をするのですか?」
蘭堂「・・・いいですか、今から勇気の出しどころです。あなたの人生で一番、勇気を使うことかもしれません。」
「これを実行するかどうかは、あなたが決めてください。」
「今から、お父さんに電話をかけて、先ほど書いたお父さんへの感謝の言葉と謝る言葉を伝えてください。うまく話せないなら書いたことそのまま読んでもいいですよ。」
「あなたにとって大変抵抗のある事ですが、これをするかしないかで大きな違いが生まれます。伝えたら、すぐに電話を切ってかまいません・・・。どうですか?・・・やってみますか?」
恒子「・・・確かに、今までで一番勇気のいることですね・・・。」
「う~ん・・・これが今の悩みを解決できるなら、やってみる価値はありそうですが・・・だけど・・・難しいですね・・・。」
蘭堂「やるかやらないかは、ご自分で決めてください。一生に一度の勇気をふるう価値はあると私は思いますがね・・・。」
「ところで私はこれから次の仕事がありますので、このあたりで失礼しますが、
もしこれを実行されたら、またご連絡下さい。次のステップをお教えいたします。では失礼いたします。」
恒子にとって救いは、蘭堂の言っていた、「形だけでいいから伝えてみませんか」という言葉だった。
父に謝るという実感は沸いてこない。悪いのは父だ、謝るのは筋違いだという思いが強い。
だけど、書いた内容を読むだけならできそうかも。それなら、勇気だして、してみようかとも思った。
こんなきっかけでもなければ、恒子が父と話をする機会は一生ないのかもと思った。
今までは、電話をかけて父が出ても、お母さんに代わるとの一言でやってきた。父は娘が自分に用がないことをわかっているのだ。
今日こそは父と話そう。いや、父に伝えよう。
震える手で受話器を取った。・・・母が出た。
恒子「もしもしお母さん、私だけど・・・。」
母「あら恒子、元気にしてるの・・・?」
恒子「うん、まあね・・・。ねえお母さん、お父さんいる?」
母「えっ、お父さん?あなた、お父さんに用なの・・・?」
恒子「うん・・・、ちょっとね・・・。お父さんに代わって。」
母「まあまあ、珍しいこと。ねえ、お父さんに何の用?」
恒子「えっ、え~っと・・・。ちょっと説明するとややこしいので、お父さんに代わってください・・・。」
母「ハイハイ、わかったわ。チョット待ってね、お父さーん、電話よー。恒子から。」
父がでるまで、恒子の身体がかすかに震えた。緊張は頂点に達していた。
http://teivillage.slmame.com/

恒子「正直なところ、その覚悟まではできていないかもしれません。ですが、できることは何でもやってみます。許せるものなら、許して楽になりたいのが本音です。」
蘭堂「では、やってみましょうか。お父さんを許すのは、他ならないあなた自身の自由のためです。」
「紙を用意してください。上の方に『父に感謝すること』と書いてください。どんなことがありますか・・・?」
恒子「そうですね・・・まず、働いて養ってくれたことです。父が働いて稼いでくれたおかげで、私も大きくなりましたから・・・。」
蘭堂「それを紙に書いて下さい。他にありますか?」
恒子「う~ん・・・。私が小学生の頃、よく公園に連れていってくれましたね・・・。」
蘭堂「それも書き込んで下さい。まだありますか?」
恒子「それくらいでしょうか・・・。」
蘭堂「わかりました。では、もう1枚の紙に『父に謝りたいこと』と書いてください。謝りたいことは、何かありますか?」
恒子「取り立てて・・・何も・・・あえて言えば、心の中で反発し続けたことでしょうか・・・。ただ、心から謝りたいという気持ちにはなれませんが・・・。」
蘭堂「実感が伴わなくてもいいんです。まず形から入りますから。とりあえず今のことを書き込んでください。」
恒子「書きましたが、形といいますと、何をするのですか?」
蘭堂「・・・いいですか、今から勇気の出しどころです。あなたの人生で一番、勇気を使うことかもしれません。」
「これを実行するかどうかは、あなたが決めてください。」
「今から、お父さんに電話をかけて、先ほど書いたお父さんへの感謝の言葉と謝る言葉を伝えてください。うまく話せないなら書いたことそのまま読んでもいいですよ。」
「あなたにとって大変抵抗のある事ですが、これをするかしないかで大きな違いが生まれます。伝えたら、すぐに電話を切ってかまいません・・・。どうですか?・・・やってみますか?」
恒子「・・・確かに、今までで一番勇気のいることですね・・・。」
「う~ん・・・これが今の悩みを解決できるなら、やってみる価値はありそうですが・・・だけど・・・難しいですね・・・。」
蘭堂「やるかやらないかは、ご自分で決めてください。一生に一度の勇気をふるう価値はあると私は思いますがね・・・。」
「ところで私はこれから次の仕事がありますので、このあたりで失礼しますが、
もしこれを実行されたら、またご連絡下さい。次のステップをお教えいたします。では失礼いたします。」
恒子にとって救いは、蘭堂の言っていた、「形だけでいいから伝えてみませんか」という言葉だった。
父に謝るという実感は沸いてこない。悪いのは父だ、謝るのは筋違いだという思いが強い。
だけど、書いた内容を読むだけならできそうかも。それなら、勇気だして、してみようかとも思った。
こんなきっかけでもなければ、恒子が父と話をする機会は一生ないのかもと思った。
今までは、電話をかけて父が出ても、お母さんに代わるとの一言でやってきた。父は娘が自分に用がないことをわかっているのだ。
今日こそは父と話そう。いや、父に伝えよう。
震える手で受話器を取った。・・・母が出た。
恒子「もしもしお母さん、私だけど・・・。」
母「あら恒子、元気にしてるの・・・?」
恒子「うん、まあね・・・。ねえお母さん、お父さんいる?」
母「えっ、お父さん?あなた、お父さんに用なの・・・?」
恒子「うん・・・、ちょっとね・・・。お父さんに代わって。」
母「まあまあ、珍しいこと。ねえ、お父さんに何の用?」
恒子「えっ、え~っと・・・。ちょっと説明するとややこしいので、お父さんに代わってください・・・。」
母「ハイハイ、わかったわ。チョット待ってね、お父さーん、電話よー。恒子から。」
父がでるまで、恒子の身体がかすかに震えた。緊張は頂点に達していた。
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Posted by Tei Vought at 21:09
│ある物語の言