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プロフィール
Tei Vought
Tei Vought
2008/03生まれ
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2011年05月06日

とある家族の心の旅立ち(7)

恒子「はい、必ずやります、やらせてください!」

 電話を切って間もなく、息子が帰ってきた。息子はランドセルを投げだし、グローブを持って出ていった。
 
 『昨日、友達に追い出されたばかりだというのに、また公園に行くの・・・。』
 恒子は胸が張り裂けそうになった。

 恒子は、その心配な気持ちをまぎらわすように、宿題に取りかかった。
 父に感謝する言葉が次々と浮かんできた。

・現場監督のきつい仕事を続けて、家族を養ってくれた。
・子供の頃、高熱を出し夜中に病院に連れて行ってくれた。
・よく海や川に連れて行ってくれて、泳ぎを教えてくれた。
・私はメロンが好きで、誕生日には必ず高級なメロンを買って帰ってきてくれた。
・いじめられた時、その子の家まで文句を言いに行ってくれた。
・私立大学入学時、高い入学金を文句を言わず出してくれた。
・私の就職先が決まった時に、とても豪華な寿司を出前で取ってくれた。その時私は「あまり好きじゃない」と言ってほとんど食べなかった。父はしょんぼりしていた。
・嫁入り道具に、とても気に入ったタンスが高価だったけど、無理して買ってくれた。

恒子「お父さん・・・。」

 私は、こんなにも愛されていたんだ。大事にされていたんだ。反発ばかりしていたのに・・・。でも、その父に何の感謝も恩返しもしていない自分・・・。親孝行なんて何もしていなかった自分、恒子は初めてそのことに気がついた。父親の仕事を尊敬していなかったことにも気づいた。父親の現場監督の仕事に対して、「品がない」とか「知的でない」とか思っていた。父親が仕事を頑張り続けてくれたおかげで、自分は大学まで行かせてもらえたのに。
 
 父親の仕事に対して、尊敬と感謝を感じた。
 ふと、脳裏に浮かんだ。
 
 「同じことを主人に・・・。」
 
 考えがまとまらなかったが、続けて「父に対して、どのような考え方で接したらよかったのか」について一気に書き続けた。
 「父の言動の奥にある愛情に気づくこと。自分が不完全な人間であるように、父も同じで不器用な人間であることを理解すること。父からの愛情に感謝し、それを心と行動で伝えること。愛してもらうだけではなくて、自分から愛する、喜ばそうとすること。そしてそ、イヤなことはイヤと伝え、お互い居心地の良い関係を築くこと。」

 恒子は気づいた。これはまさしく、夫に対してもするべきことなのだと・・・。毎日働いてくれている夫、自分の人生のパートナーでい続けてくれている夫、自分は夫に心から感謝していない。それどころか教養がないとか思慮が浅いと軽蔑していた自分、恒子は心底、夫に悪いと気がついた。夫に対して、こんなに素直な気持ちになったのは初めてだった。自分は夫に感謝することを忘れていた。これは父に感謝できたことと関係があるのかもしれない。
今日は夫に感謝の言葉を伝えよう。

 そんなことを考えているうちに、外は暗くなりかけていた。
 思えば、今日は家事らしきことをほとんどしていない。
 朝の9時ごろ蘭堂に電話してから、1日中自分と向き合っていた。
 
 「晩ご飯の用意、どうしよう・・・。」
 
 そう思った時に、拓海が帰ってきた。


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Posted by Tei Vought at 16:23ある物語の言