2011年04月27日
とある家族の心の旅立ち(5)
父が出るまで、恒子の身体がかすかに震えた。緊張は頂点に達していた。
ずっと父のことを嫌ってきた。父に心を開くことを拒んできた。
その父に、感謝の言葉と謝りの言葉を伝えるのだ。
できっこない・・・そう思った。受話器を置こうか・・・。
しかし、息子のことで悩みぬいた恒子は、それが解決できるなら、わらにもすがりたい。どんなことでもしようと。受話器を握りしめた手が汗で冷たかった。
父の声が聞こえてきた。
父「な、なんだ・・・。 わしに用か・・・?」
恒子は、自分では何を言っているかわからないくらいパニックになりながらも話し始めた。
恒子「あっ、あのー・・・。私、今まで言わなかったのだけど・・・、言っておいたほうがいいかなと思って・・・電話したのだけど・・・。えーと・・・、お父さん、現場の仕事けっこう大変だったと思うの・・・。お父さんが頑張ってくれたおかげで私を育ててくれたわけだし・・・。あのー・・・、子供の頃、よく公園へも連れてくれたし・・・。なんていうか・・・、ありがたいっていうか、感謝みたいなこと言ったことないと思って・・・、それで、一度ちゃんと言っておきたいって思って・・・。」
「それと私・・・。お父さんに反発してたこと、謝りたくて・・・。」
恒子は、ちゃんと「ありがとう」とは言えなかったし、「ごめんなさい」も伝えられなかった。
だけど、言うべきことは一応伝えた。
早く電話を切ろう。そう思った。
しかし、父から言葉が返ってこない。
何か一言いってよ、電話が切れないじゃない・・・そう思ったとき、母からの声が聞こえてきた。
母「恒子、お父さんに何を言ったの・・・?」
恒子「えっ・・・。」
母「お父さん・・・ここで泣き崩れているじゃないの・・・。何かひどいことを言ったんじゃないの?」
受話器から、父が声を殺して泣いている様子が伝わってくる。恒子は呆然とした。
生まれて初めて、父が泣いている声を聞いた・・・。父はいつも泣かないものだと思っていた。父はそんな強い存在だった。
その父のむせび泣く声が続いている・・・。自分が形ばかりの感謝を伝えたことで、父の涙声を聞いて、恒子の目からも涙があふれ出た。
父は、私のことをもっともっと愛したかったんだ。
親子らしい会話もたくさんしたかったんだ。
だけど、私はそれを拒み続けてきた。
父は寂しかったんだ。
仕事でどんなに辛いことがあっても耐えていた強い父が、泣き崩れている。
娘に愛が伝わらなかったことが、そんなに辛いことだったんだ。
恒子の涙も嗚咽に変わっていった。
しばらくして、また母の声。
母「恒子、もう落ち着いた?説明してくれる・・・?」
恒子「お母さん、もう一度お父さんにかわってくれる・・・?」
父「恒子・・・すまなかった・・・、、わしはいい父親じゃなかった・・・、、お前には・・・いっぱい嫌な思いをさせて・・・、、」
恒子「お父さん、ごめんなさい・・・、、私こそ悪い娘でごめんなさい、、私を育ててくれてありがとう・・・、、」
母「恒子、何が起きたの?お父さん泣きっぱなしで・・・あなたまで泣いて・・・落ち着いたら説明してね。一旦、電話切るね・・・。」
恒子は、電話を切った後も、しばらく呆然としていた。
20年以上も父を嫌っていた。ずっと許せなかった。自分だけが被害者だと思っていた。自分は父の一面だけにとらわれて、別の面に目を向けてこなかった、向けたくなかった。
父の愛、父の弱さ、父の不器用さ・・・。なにも見ていなかった。父もどんなに辛かっただろう・・・。
自分は父に、どれだけ辛い思いをさせてきたのだろう・・・。いろんな思いが心をよぎった。
蘭堂の「まずは、形から入ればOKです。気持ちはついてきますから。」と言った言葉の意味が、わかりかけてきた。
あと1時間くらいで、拓海が帰ってくる。心を落ち着かせよう。
そう思った時に、電話が鳴った。
出てみると蘭堂だった。
蘭堂「蘭堂です。今、40分くらい時間がありますのでお電話しました。先ほどは途中で電話を切って失礼しました。」
恒子「蘭堂さん、実は私、父に電話したんです。電話して本当によかったです・・・。ありがとうございました。蘭堂さんのおかげです・・・。父と少し話ができました。」
蘭堂「そうでしたか。勇気を持って行動されて、よかったですね。」
恒子「はい・・・。私にとって、息子がいじめられていることが最大の問題だと思っていましたが、長年父を許していなかったことの方が、よほど大きな問題だったんだと気づきました。息子の問題のおかげで、父と和解できそうだとわかると、息子の問題があってよかったのだという気すらします・・・今は。」
蘭堂「息子さんについてのお悩みを、そこまで前向きに捉えることができるようになったのですね。勇気がいったでしょう・・・。」
「潜在意識の法則というのがありましてね。それは人生で起こるどんな問題も、何か大切なことを気づかせてくれるために起きるということなのです。」
「つまり、偶然いろんな災いが身に降りかかるのではなく、起こるべくして必然的に起きていると捉えるのです。ですから、前向きで愛のある対応による取り組みさえすれば、必ず解決できるような問題が降りかかってくるのです。」
「逃げるのではなく、立ち向かって解決ができれば、この問題が起きてよかったということが起きるのです。『問題が起きてありがとう』と言えるようになるのです。」
恒子「そうなのですね・・・。ただ、息子の問題は何も解決されていないようにも思えるのですが・・・。」
蘭堂「息子さんの問題は未解決なままだと思っていらっしゃるのですね。もしかしたら、解決に向けて大きく前進しているのかもしれませんよ。心の世界はつながっているのですから、原因を解決さえすれば、結果は自ずから変わってくるしかないのですから。」
恒子「本当に、息子の問題は解決するのでしょうか?」
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ずっと父のことを嫌ってきた。父に心を開くことを拒んできた。
その父に、感謝の言葉と謝りの言葉を伝えるのだ。
できっこない・・・そう思った。受話器を置こうか・・・。
しかし、息子のことで悩みぬいた恒子は、それが解決できるなら、わらにもすがりたい。どんなことでもしようと。受話器を握りしめた手が汗で冷たかった。
父の声が聞こえてきた。
父「な、なんだ・・・。 わしに用か・・・?」
恒子は、自分では何を言っているかわからないくらいパニックになりながらも話し始めた。
恒子「あっ、あのー・・・。私、今まで言わなかったのだけど・・・、言っておいたほうがいいかなと思って・・・電話したのだけど・・・。えーと・・・、お父さん、現場の仕事けっこう大変だったと思うの・・・。お父さんが頑張ってくれたおかげで私を育ててくれたわけだし・・・。あのー・・・、子供の頃、よく公園へも連れてくれたし・・・。なんていうか・・・、ありがたいっていうか、感謝みたいなこと言ったことないと思って・・・、それで、一度ちゃんと言っておきたいって思って・・・。」
「それと私・・・。お父さんに反発してたこと、謝りたくて・・・。」
恒子は、ちゃんと「ありがとう」とは言えなかったし、「ごめんなさい」も伝えられなかった。
だけど、言うべきことは一応伝えた。
早く電話を切ろう。そう思った。
しかし、父から言葉が返ってこない。
何か一言いってよ、電話が切れないじゃない・・・そう思ったとき、母からの声が聞こえてきた。
母「恒子、お父さんに何を言ったの・・・?」
恒子「えっ・・・。」
母「お父さん・・・ここで泣き崩れているじゃないの・・・。何かひどいことを言ったんじゃないの?」
受話器から、父が声を殺して泣いている様子が伝わってくる。恒子は呆然とした。
生まれて初めて、父が泣いている声を聞いた・・・。父はいつも泣かないものだと思っていた。父はそんな強い存在だった。
その父のむせび泣く声が続いている・・・。自分が形ばかりの感謝を伝えたことで、父の涙声を聞いて、恒子の目からも涙があふれ出た。
父は、私のことをもっともっと愛したかったんだ。
親子らしい会話もたくさんしたかったんだ。
だけど、私はそれを拒み続けてきた。
父は寂しかったんだ。
仕事でどんなに辛いことがあっても耐えていた強い父が、泣き崩れている。
娘に愛が伝わらなかったことが、そんなに辛いことだったんだ。
恒子の涙も嗚咽に変わっていった。
しばらくして、また母の声。
母「恒子、もう落ち着いた?説明してくれる・・・?」
恒子「お母さん、もう一度お父さんにかわってくれる・・・?」
父「恒子・・・すまなかった・・・、、わしはいい父親じゃなかった・・・、、お前には・・・いっぱい嫌な思いをさせて・・・、、」
恒子「お父さん、ごめんなさい・・・、、私こそ悪い娘でごめんなさい、、私を育ててくれてありがとう・・・、、」
母「恒子、何が起きたの?お父さん泣きっぱなしで・・・あなたまで泣いて・・・落ち着いたら説明してね。一旦、電話切るね・・・。」
恒子は、電話を切った後も、しばらく呆然としていた。
20年以上も父を嫌っていた。ずっと許せなかった。自分だけが被害者だと思っていた。自分は父の一面だけにとらわれて、別の面に目を向けてこなかった、向けたくなかった。
父の愛、父の弱さ、父の不器用さ・・・。なにも見ていなかった。父もどんなに辛かっただろう・・・。
自分は父に、どれだけ辛い思いをさせてきたのだろう・・・。いろんな思いが心をよぎった。
蘭堂の「まずは、形から入ればOKです。気持ちはついてきますから。」と言った言葉の意味が、わかりかけてきた。
あと1時間くらいで、拓海が帰ってくる。心を落ち着かせよう。
そう思った時に、電話が鳴った。
出てみると蘭堂だった。
蘭堂「蘭堂です。今、40分くらい時間がありますのでお電話しました。先ほどは途中で電話を切って失礼しました。」
恒子「蘭堂さん、実は私、父に電話したんです。電話して本当によかったです・・・。ありがとうございました。蘭堂さんのおかげです・・・。父と少し話ができました。」
蘭堂「そうでしたか。勇気を持って行動されて、よかったですね。」
恒子「はい・・・。私にとって、息子がいじめられていることが最大の問題だと思っていましたが、長年父を許していなかったことの方が、よほど大きな問題だったんだと気づきました。息子の問題のおかげで、父と和解できそうだとわかると、息子の問題があってよかったのだという気すらします・・・今は。」
蘭堂「息子さんについてのお悩みを、そこまで前向きに捉えることができるようになったのですね。勇気がいったでしょう・・・。」
「潜在意識の法則というのがありましてね。それは人生で起こるどんな問題も、何か大切なことを気づかせてくれるために起きるということなのです。」
「つまり、偶然いろんな災いが身に降りかかるのではなく、起こるべくして必然的に起きていると捉えるのです。ですから、前向きで愛のある対応による取り組みさえすれば、必ず解決できるような問題が降りかかってくるのです。」
「逃げるのではなく、立ち向かって解決ができれば、この問題が起きてよかったということが起きるのです。『問題が起きてありがとう』と言えるようになるのです。」
恒子「そうなのですね・・・。ただ、息子の問題は何も解決されていないようにも思えるのですが・・・。」
蘭堂「息子さんの問題は未解決なままだと思っていらっしゃるのですね。もしかしたら、解決に向けて大きく前進しているのかもしれませんよ。心の世界はつながっているのですから、原因を解決さえすれば、結果は自ずから変わってくるしかないのですから。」
恒子「本当に、息子の問題は解決するのでしょうか?」
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